『プリンシパル』/いくえみ綾<全7巻>のあらすじと感想です。
ネタバレ注意!
あらすじ
主人公・糸真は、東京で母・継父と暮らしていたが、
学校でハブられ、登校拒否になってしまう。
そこで母の元を離れ、
実父のいる札幌に引っ越すことになります。
近所に住む同級生の和央、その親友の弦は、学校の人気者。
物語は糸真・和央・弦の3人を中心に回ってゆきます。
和央は母と二人暮らし、貧しい生活。
序盤、糸真が同情・お節介・思いやりのどれかわかりませんが(本人の意識では「思いやり」)
ちょっとした手助けをしようとしたことで、和央に拒絶されて泣いてしまう。
しかしその後仲直りし、親しくなります。
弦は和央の家の隣の屋敷(?)に住む金持ち。
和央との差、、
でも和央とは幼い頃からの付き合いであり、親友。
新しい学校で友達ができて、
父との生活もうまくいき、
札幌での生活を楽しめるかも・・というところでまた糸真ちゃんに試練が。
その1:友達だと思っていた晴歌に裏切られる
その2:親父が和央母にアプローチし始める
糸真ちゃんも大変だ。。
その2は置いといて、その1は本当にかわいそうです。
せっかくまた学校生活頑張ってたところだったので。
母親も何回も結婚してその度に複雑な感情を抱いてきたのでしょうが、
今度は父親も・・・ってことで、戸惑っていた糸真ですが、
すぐに受け入れて
「恋愛は自由だからね!」と
お父さんに声をかけてあげていました。
その後、なぜか晴歌と逆に親しくなり、
糸真父と和央母が結婚して4人家族になります。
糸真は和央に淡〜い恋心を抱いていましたが、
和央の想い人は弦の姉・弓ちゃん。
しかも幼い頃からず〜っと。
つけいるスキなし。糸真の恋はほとんど始まることもなくあっさり終了。
弓ちゃんは一回結婚して横浜に住んでいましたが、
離婚して札幌に帰り、糸真たちの学校で音楽の先生をしています。
嫉妬からか、糸真は弓に対して嫌悪感を抱くのですが、
なんだかんだあって結局は和央と弓を応援するようになります。
その後和央と弓はお互いに好きだと言い、
晴歌は弦に告白。
二組とも一応カップルになります。
弓と和央は「先生と生徒」であり、
さらに弓の母親から猛反対されるため、障害満載。
でも二人の長年の絆は揺るぐことはありません。
晴歌・弦の方は、
「男女っぽいことをしたくてたまらない」晴歌と、
そういうことに全く興味ない弦。
なんだかチグハグな二人な上に、弦は糸真のことがいつも気になってしまいます。
みんなカップルでさみしくなった糸真は、
晴歌の同中の男・金やんを紹介してもらって
付き合うことになります。
金やんっていう雑な呼び名から容易に推測できる通り
当然のごとく当て馬キャラ。
糸真ちゃんが、作中で唯一
「利己的な行動」(さみしいから彼氏欲しい)を取ったところでした。
それなりに初めてのお付き合いを楽しみましたが、
結局うまくいかず別れます。
(金やんが枕をボンボン叩くのは私も猛烈に嫌でした)
糸真は弦に告白しますが、
晴歌と別れたての弦は、「無理」ときっぱり。
でもやっぱり糸真がそばにいないとつまらないことに気がついて、
高校卒業の時になってやっと
二人はカップルになります。
終わり。
感想
弦と糸真のカップル
お互い「相手のことが気になってる自分」になかなか気がつかないのが
可愛かった。子供っぽくて。
まだ子供だからチューしたいとかそれ以上のあれやこれやしたいとかはないんだけど、
糸真は「弦が他の誰かのものになるなんて寂しい」
弦は「糸真がいないとつまらない」
という形で、
時間差でようやく気持ちを自覚することができました。
糸真が晴歌より人から好かれるのは当たり前。
晴歌は利己的で
糸真は利他的だから。
糸真はお母さんと住んでいたときも、
お父さんのところに引っ越した後も、
他のみんなに気を遣い、場が収まるように努めてきたのですが、
「結局利己的な人(晴歌や、ある意味和央も?)の方が
幸せになってる(好きな人と結ばれる)じゃん」と、
虚しくなってしまったのかもしれません。
「自分は我慢してるのに」と。
金やんを傷つけたのは残念だけど、
まあ別に金やんも糸真のことを心から好きだったわけでもなさそうだし、
それは良しとして。
最後の最後に、
今までいろんなことを我慢して
頑張ってきた糸真ちゃんが弦とくっついて本当に良かったです。
大学生になった糸真のファッションは
ちょっと謎だったけど、、、
「呼び方」
弦が作品の途中から
晴歌のことを名前で呼び、
別れ話の時に「国重」呼びになる。
付き合ってから「糸真」と呼んでいた金やんが、
糸真から振られた後に「住友さん」呼びに戻る。
弦は自分から別れようとしてたからわかるんですが
金やんは「ふられたけどまだ別れたくない」の時点で
すでに名前呼びから苗字呼びに戻っているんですよ。
そこがちょっとひっかかって・・・
口では「まだいけるよ」と言いながらも、
「もうとっくに心は離れている」ということが表現されているのかなあと。
「苗字呼び」と「名前呼び」の距離感。
日本独自の文化であり、
いくえみ先生の作品にはよくそれが使われている気がする。
弓ちゃんの気持ち。
最終的には和央とくっつくのですが、
和央への気持ちは恋愛なのかな?と疑問でしたね。
和央のことをずっと長い間気にかけてきて、
「和央のことが大事」
「和央に幸せになって欲しい」
という気持ちは誰よりも強いとは思うのですが、
それは果たして恋愛なのか・・・
しかし番外編ではちゃんと恋人っぽく
和央にネチっと怒ったりして
カワイイ弓ちゃんでした。
誰に対しても優しく、
糸真や弦の暴言も全く気にせず、
いつも暖かい弓ちゃんが大好きでした。
晴歌がNG(個人的に)
私個人の意見ですけども、2巻で晴歌が糸真をハブにして
「ムカつくんだも〜ん」とかほざいてるところから、
晴歌の顔を見るだけで腹立って仕方なくなりました。
人間誰しも欠点はあるものだし、
弦のことが好きだから嫉妬するのはわかるし、
「友達に嫌いなところがあってもいい」(潔く柔くで言ってた)というのもわかっているんですけども、
待ち合わせ時間・場所指定して、全員でボイコットっていうのは・・・・
ちょっとやり口があまりにもゲスすぎる。
せめて一人でやれって思うし、
何よりこんなやつの作ったなます食いたくないと思いました。
私の心が狭いのか。
「ボイコットからのなます」に関しては2巻をご覧ください
でもなんか顔の描き方が、やたら目がでかすぎて
美人に描かれているんだがよくわからないし、
いくえみ先生は「晴歌うざい」って読者に思って欲しいのか?と
推測してしまうほど、うざい顔に描かれてました。(いや、私にはそう見えるというだけかも)
とにかくこいつが物語の最後まで出てくるというのが(それどころか完結後の番外編にまで主役級で登場する)
残念でした。
好きな作品だから読み返すんですが、
こいつのおかげでイラァっとしてしまいます。
カルシウム不足でしょうか、、
糸真父と和央母が素敵
糸真父も和央母も、
「元配偶者のことを悪く言わない」ところが良いなあと思いました。
糸真父は元妻のことを「ほんとはいいやつなんですよ?」と言い、
和央母は「元夫は死ぬ前に他の女性と住んでいたらしく、ほっとした」と話す。
お互い、そういうところに惹かれたのではないでしょうか。
元配偶者は子供の親であり、
悪く言うことは子供を否定することにもなりかねないし。
雪まつりで糸真母とバッタリの時の和央母は、ものすごく美人に描かれてました。
その後は、年齢相応にシワが入ってます。
和央母の本当のところの心情というのは全く説明がありませんでしたが、
和央のことも新しい家族のことも心から大事にしているのが伝わってきて、
幸せになってくれて良かったです。
まとめ
最初はあまり好きになれなくて
ば〜っと読み飛ばしてしまったのですが、
何回か読んでいるうちに
すっかりお気に入りの作品となってしまいました。
弦が圧倒的人気のようですが、
私は和央の方が好きかも。
『プリンシパル』は7巻完結です。
ぜひ読んでみてください。