11巻までコミックス発売中、ココハナで連載中の『アシガール』。
まだ完結していませんが、現時点での感想を書きたいと思います。
以下、ネタバレ含みますのでご注意ください。
あらすじ
あらすじと小見出しをつけていながら、
あまり細々と詳しく書く気は無いのですが、
あくまでざっくりと。
現代で暮らす、足が速いだけが取り柄の女子高生・速川唯が、
弟・尊が作ったタイムマシンをうっかり使って戦国時代にタイムスリップ。
そこで見かけた若君に一目惚れ。
若君の命を守るべく、足軽となって戦国を生きる。
まあ・・そんな感じですね・・・(ざっくりすぎ)
感想・見どころ
「戦国時代」「タイムスリップ」
どちらの要素もあまり好きでない私は、
長い間アシガールに手を付けずにいました。
絵くらいは見かけたことがあったのですが、
いかにも
あ〜フツーの女子が美男子に一目惚れして何故かまんまとうまいこといった話ね
と冷めた目で見て喰わず嫌い。
人気が出て、巻数がかさんでいるんだろうなと思っていました。
しかし、1巻無料の時に読んでみたら、
ものすごく面白くて、
一気に続刊を買ってしまいました。
巻数についても、中身を読んでみると全然長く感じません。
「引き伸ばしてる感」がゼロなんです。
ほぼ全てが不可欠で必要な要素。
(若君の生まれ変わりの男の話だけは蛇足と感じたが)
笑いあり涙ありの名作です。
魅力その1:絵がうまい&キレイ
少女漫画によくありがちな要素として、
「みんな顔がいっしょ」
という点があると思うのですが、
アシガールに関してはそれが全くありません。
ちゃんと、みんな顔が違います。
(↑文字にするとなんかおかしいのですが、本当に、少女漫画ではキャラの顔を描き分けられてないことがよくあるんです!)
それに絵がスッキリしていてとてもキレイ。
設定的にあまり気が進まないな〜と思って読んでみたものの、
絵がキレイなのでどんどん読み進めることができて、
結果的にストーリーを楽しむことができました。
よくあるじゃないですか。
漫画の中では「イケメン」設定なのに、
全くイケメンに見えないという現象。
しかし、若君はちゃんとイケメンです。
少女漫画に出てくる美形設定男子がさほど好きでない私でも、
若君はかっこいいと感じます。
もちろん、中身の素晴らしさも相まってのかっこよさです。
ただ、私は若君より尊のほうが好みなのですが。
若君が超絶美形であることがこのお話の肝でもあるかと思いますが、
私はアシガールに出てくる「美しい女性」も大好き。
というか若君よりそっちの方が私にとっては目の保養になっております。
ひとりめは松丸阿湖。
6巻で初登場します。
阿湖姫がもう〜可愛くて可愛くて可愛くて!!!
ありえないくらい可愛い。マジで可愛い(しつこい)
成之と結婚することになったので、
ずっと物語に出てきてくれて嬉しいです。
見た目の可愛さだけでなく、意外と芯があって勇気があるところも良いですね。
2人目は、若君の母・お方様。
8巻で初登場です。
もう、この人こそが絶世の美女。綺麗すぐる。
でも相当な画力がないとここまでの美人は表現できません。
すごいと思う。
もうこの人が出てくるだけでめっちゃメロメロします。(夫・忠高と同じように)
二人とも、着物もものすごく綺麗ですし。
画面が一気に華やかになります。
魅力その2:笑うポイント多すぎ
作中で、若君は何度か
「腹が痛い」
と言ってしまうほど、唯がおもしろすぎて笑っています。
笑えない状況で、こらえながらプッと吹いているシーンもたくさんあります。
まずは初の閨チャレンジ(2巻)。
酒を飲まされてかあ〜〜〜〜〜っと
変な顔になるところ。
若君爆笑、そして読んでいるこっちも爆笑です。
その直後、
若君から「歌を詠んでみろ」と言われ(短歌とか俳句のことです)
唯はなんと「おお牧場はみどり」を大声で歌います。
私なんかは何度読んでもここで笑ってしまいますが、若君もこれを後から何度も思い出して笑ってますw
また、3巻で初登場するまぼ兵くん。
その後何度も登場しますが、最高に平和的かつ面白すぎる戦法。。
初めて見たときは衝撃を受けました。そして超笑った。
まあこんなのはほんの一部なんですが、
ついつい笑ってしまうところが
かなり多いです。
魅力その3:泣けるポイントも多すぎ
ギャグ漫画か?と思えるほど爆笑シーンの多いアシガールですが、
感動シーンもかなりあります。
戦国時代という特殊な設定柄、
常に生きるか死ぬかの極限状態なので、
読んでいるこっちの感情の振れ幅も大きい。。
「泣き」の巻は10巻。
小垣城を開城することになり、
若君が囚われる寸前で唯が現れました。
足軽の格好で、ボロボロの唯・・・
どんなときも戸惑いを見せることのない若君の顔が、驚きと嬉しさでほんの少しだけ崩れました。
そして婚礼を済ませ、
閨で思わず唯が泣いてしまうところです。
完全にもらい泣きしてしまいました。
10巻まで、2人が固い絆を築いてきたのを
見てきたからこそ、切なかったです。
さらには、唯が不本意にもひとりで現代に帰ることになってしまったところ。
月を見る若君の背後で、タイムマシンを作動させる音が聞こえた時の、
若君の表情。
作中で唯一、本当に本当に辛そうな顔をします。(横顔半分だけなんですけど)
これらが全部10巻に詰まっているので、
10巻は読むのが結構苦しいです。
考察その1:若君はなぜ唯に惚れたのか
私は、大した理由もないのにハイスペック男子が普通女子を好きになるストーリーが嫌いです。
そりゃあ確かに読者の大半は「普通女子」であり、
イケメン男子に好かれるという夢のようなお話を主人公を通して擬似体験できる、
というのも少女漫画の醍醐味なのかもしれません。
しかし、私はもう少女じゃないので、
そういう展開になると途中で白けてしまうわけですよ。
あるわけねーだろ、そんなの
と。
(心が汚れきった大人)
で、そんな私の趣向は置いといて、
アシガールでは
「誰もが認める美形若君・忠清」が
「決して美人とは言えない(男に変装してもほとんど気付かれないレベルの)唯」に
もうめちゃくちゃベタ惚れです。
でもそれは少女漫画の夢物語ではなく、
納得できる明確な理由があります。
ただ、作中、忠清は唯に出会うまでどんな美人を連れてきても手を付けたことがなかったそうなので、
周りの男どもは(女どもも)もう理解不能。
忠清の兄・成之からは
「忠清殿の女子の好みは珍妙」とまで言われてしまい、
以後幾度となくからかわれています。
「いかなる美人にも興味を示さなかったイケメン男が、河童頭の男みたいな女に惚れた」
とだけ聞くと、それは確かに珍妙な趣味かもしれません。
しかし、言うまでもないことですが、
若君はものすごく深いところで唯に惚れているのです。
初めて2人がまともに話した、
唯が「ふく」として若君の閨へ行ったシーンで、
「若君がどうして唯を好きになったのか」という理由はほとんど説明されているかと思います。
このシーンは2巻にあります。
二人が話す最初の場面でありながら、最も重要な場面だと思っています。
「敵・味方関係なく誰も死んでほしくない」という共通意識。
唯のほうは現代人としては普通の意見なのですが、
戦国時代の武将に会ってそれを言えるか…
唯のまっすぐさと正直さがここで表れているんじゃないかと思います。
「戦をしたくない」「たとえ敵でも死なせたくない」という若君の気持ちは、
戦国時代の武士としては少数意見でしょうから、
「初めて分かり合える人が現れた」と感じたのでしょう。
さらには上に書いた通り、このシーンで若君は唯にやたら笑わされてしまっています(※唯は笑いを取っているつもりは無い)。
戦国で、常に暗い話も多いし、
「笑って楽しく過ごせる人」というのも唯に惹かれた理由だったかもしれません。
さらには去り際の
「私 絶対に守りますからね!」
という唯の言葉。
これがダメ押しになったのでしょう。
女に言われたことはなかっただろうし。
ということで、
・戦で勝つことよりも人の命が大切だ、という意見が一致している
・一緒にいると楽しく過ごせる
・「絶対に守る」という言葉から感じた唯の強さ・たくましさ
このような理由で若君は唯に惚れたんだと思います。
もちろんその後の色々なやりとりがあり、何度も唯に命を救われたこともあって、
さらにその想いは深くなっていくわけです。
若君が普段全く表に出すことのない、それどころか自覚すらしていないであろう
「寂しさ」とか「心細さ」とかを、
唯は埋めてくれるような存在なんだと思います。
そういうわけで、
超絶イケメンの若君が唯のことを好きになるのは珍妙でもなんでもなく、
上記のようなかなり説得力のある理由に基づいていると思います。
考察(というか疑問?)その2:結末はどうなるのか
1巻で、森本先生は
「この物語は結末から思いついた」
という趣旨のことを書いています。
でも、、、
11巻まで出ている今でも
私、全く結末が想像できません。
想像力なさすぎでしょうか?
とりあえず、森本先生の言葉から察するに、
離れ離れエンドはなさそうです。
唯とともにすでに歴史を変えていて、
若君は無事に生き延びるのでしょうが、
「2人はどっちの世で生きるのか?」
これがどうにも、
どっちも想像できないんですよねぇ・・・。
一応、タイムマシンはもう使えないことになっているんですけども、
漫画なんでそこは尊がどうにかして解決でしょう。
かと言って将来的に何度でも自由に行き来できるようになるとも思えない。
「戦が嫌だ」という若君の性質は、現代に向いています。
それに、若君は何度も現代での暮らし(唯の家族)を思い出し、
「ああいう風に生きたい」的なことを言っています。
しかし、家族やほかのみ〜んなをほっぽり出して
ひとり現代に行って生きるのは、まぁないだろう・・・
じゃあこのまま戦国で2人で生きる…
結局これが一番しっくりくるんでしょうか。
現代の唯の両親が可哀想すぎる気はするのですが・・・
もしかして、このまま禄合でハッピーエンドを迎えるのか・・・?そんなあっさり?
奇念が建てた忠清の碑からわかった「永禄4年に忠清が死んだ」ということについては、
唯と若君が現代に移った後「忠清は黒羽城で病死した」ということにされたから、その情報をもとに奇念は書付に記したのでしょうか。
で、現代の木村先生が
「永禄4年以降羽木の名前がない」
と言っていたのは、
若君や父上や羽木のみんなが、もう「羽木」とは名乗らずに禄合で暮らしていくということなんでしょうか。
だとすると伏線は全て回収されていることになりますが・・・。
結末予想はとても難しいのですが、
2人に子供ができて、その子供がカギになるのか?
と、ほんのり思っております。
子供が現代と戦国を行き来するとか・・・
気になることその1:現代で若君が読んでいた本
まず、
高山との和議を目前にして曲者に矢を放たれ、瀕死になったとき、
若君は初めて現代に行きました。
その時は、熱心に歴史書ばかり読んでいた若君。
次に、
人質同然に志津姫と結婚させられていたとき、
唯が救出に訪れ、
2人で現代へと逃げました。
このとき若君は、歴史書は読んでいません。
開いていた本には万有引力について書かれていて、
その近くに積まれているのは物理など科学系の本・・・・。
これは、単にこのとき若君が
「現代で生き続けることを真剣に考えていたから、歴史書は読まなかった」
と言うことなのでしょうか?
もう帰ることはないと思い、歴史について学ぼうとはせず、
尊が持っている本を借りて読んだだけなのか。
それとも何か意味があるのか・・・
若君が理系の本を読むのが意外だったので、
ちょっと気になりました。
気になることその2:おふくろ様の子供
おふくろ様は、1巻で描かれている通り、
高山との戦で夫と息子を亡くしました。
息子の名前は弥之助、享年15歳。
で・・・
唯がおふくろ様の家に行き、そこにいたのは
三之助と孫四郎。
弥之助15歳で、三之助7歳、その下に孫四郎・・・
・・・・・・
次郎(仮名)はどこいった?
名前的にも年齢差的にも、
弥之助と三之助の間に
次男がいたほうが自然だと思いませんか?
すでに11巻も出てて、
まさかこれからおふくろ様の次男がキーポイントとなるなんてことは
あまり考えられないのですが、
普通に気になります。
終わりに。
アシガールは、今の時点では紛れもなく名作だと思います。
まだひと悶着あるのかなあと思うのですが、
20巻までには終わって欲しいですね。
この勢いを保って、濃い内容のまま最後まで突っ走って欲しいです。
11巻まで出てます。